2025 Paris Deco Off & Maison & Objet レポート

 

 

1月のパリへの視察は2009年からですので、コロナ禍を除きますが15年以上続けての渡欧になります。

今年はハイムテキスタイルの後半とパリデコオフ~メゾン・エ・オブジェの前半の開催期間が重なり、

フランクフルトからパリへの移動も含めタイトなスケジュールでの視察となりました。

私の場合、ハイムテキスタイルはトレンドのチェックや、自社でインポートするブランドの新作サンプルの買い付けが主な目的です。一方パリでのイベントは、各エディターから発表される新作コレクションがどのように表現されているのかを確認するのが目的となります。

パリ市内において世界中のファブリックスや壁紙を扱うエディターを中心に、新作コレクションを一堂に発表する『Paris Deco Off 2025』が1月15日~18日の期間で開催されました。2025 年の合言葉は「ファッション」です。ファッション・デザイン学校エスモード・インターナショナルのユニークな協力のもと、「デコの中のファッション、ファッションの中のデコ」をテーマに第15回目を迎へました。

会場のひとつ、メール通りにはいつものランタンの他にカーテンも吊るされ、訪れる人の目を引いていました。

今年のParis Deco Offの出展ブランドは、右岸に27ヶ所、左岸に77ヶ所と104ものブランドが軒を連ねての出展となり、同時開催のParis Deco Homeの会場も合わせると167ヶ所にものぼりました。

近年では、特に左岸のサン・ジェルマン界隈でポップアップショールームでの出展が増え、そのエリアも広がってきました。当然2日間で全てのショールームを廻るのは無理ですので、自社の取り扱いブランドや、日本に代理店があるブランドが中心となります。

近年の政情不安やヨーロッパ経済の低迷などの影響もあり、例年に比べると少し華やかさに欠ける印象でした。週末に各ショールーム行われるパーティーも今年は静かな感じでした。

そのような中で受けた印象としては、二極化という動きです。勢いのあるエディターは多くのコレクションを展開し、グループの中で新しいブランドコレクションを発表している会社もありました。

ハイエンドをターゲットとしたブランドは、より高級なファブリックを製作しています。新しい技術を駆使して特殊な糸や折り方法での表現、ブロックプリントや手刺繍など手間暇の掛かるハンドメイドの手法も数多く見られるようになりました。また、ファッションやセラミックのデザイナーとコラボレーションしたデザインも多く見受けられました。

その中で特に元気のよかったのは、フランス本国のエディターです。自国開催ということもあるでしょうが、リールに本社を構えるCASAMANCEは、新しいブランドも追加され4ブランドで30ものコレクションを展開、それ以外にラグのコレクションも新たに加わり、企業としての勢いが感じれました。

当然それらのショールームには人が溢れ、活気に満ちていました。メゾン・エ・オブジェの会場では、トレンドブース “WHAT’S NEW?” にも多くのコレクションを提供していました。

また、フランスのトップブランドPIERRE FREYは、左岸の特設会場ホテル・ド・ギーズを改装して、完全予約制でゴージャスなインスタレーションを行っていました。

それでは、デザインやカラーの傾向に付いてもお伝えしていきましょう。

各ブランドの今年発表されたコレクションの中で多く見られたモチーフは、砂漠や自然の風景などランドスケープのデザインを抽象的なイメージで表現したものでした。その他、エスニック・アフリカ・アラビアなど「民族文化」がコンセプトの展示もありました。

また幾何学的な柄としてアルーデコの特徴を活かしたしたデザイン。一昨年から続く「チベタンタイガー」や、植物の柄としては、パームツリーや麻の葉などのモチーフが多く見られました。

素材としては、サスティナブルの進化系として、麻素材の中でもヘンプが多く使われるようになりました。

ヘンプ素材は、気候変動や海洋汚染などの課題解決の可能性を持つ植物として世界中で注目されています。

 

カラーの傾向として特に印象的だったのは、深みのあるリッチな色。グリーンやコッパー、ブラウン系、深みのあるブルーなどです。

また、自然を感じさせるアースカラーとしてオリーブグリーン、サンドベージュ、テラコッタなどのナチュラルな色味、トープや石のようなグレーなどのより複雑な色合い、そして、ニュートラルカラーを組み合わせたり重ねたりする傾向が見られました。

 

 

また、よく耳にしたのは「ドレープ」という言葉です。よりドレープ性の良い、落ち感の美しく優美なシルエットを作り出しますというフレーズが、デザイナーの言葉にも表れていました。

このように、実際に足を運んで自分の目で見、触れて、デザイナーから直接得た情報は、お客様へのセールストークにも活かされています。

また、世界的なインテリアの方向性を肌で感じることで、業界の中での自分の立ち位置や役割なども見えてきます。

お客様と接する機会の多い私たちは、世界の潮流も意識しながら正しい情報を伝えていくことが大切だと思っています。